お金が無い

 お金が無い。今自由に使えるのは数千円、次の仕送りは2週間後、給料日までは1週間。それまでにバイト先までの交通費の立替だとか、バンド練習のスタジオ代もある。万事休する程では無いが、そこそこの窮境だ。序に言えば時間もない。1週間後のサークルの行事の日程組み、ベースの音取り、バンド練習、大学の授業、自動車学校、就活、引っ越し、そして寄稿曲の作業。到底こんな日記を書いている場合ではない。更に、先週末風邪を引いたばかりなので体力も無い。金、時間、体力。生活を楽しむのに必要な資源の多くが損なわれている。事実、土曜日に行くつもりだった知り合いのバンドのレコ発イベントはじめ、今月の楽しみだったライヴはほぼ全部諦めた。ただ月末のM3にだけは一縷の望みを残している。それだけが楽しみだ。

 何故こうも金欠になったのか振り返ってみる。先月はサークルの人と勢いでパフェを食べに行ったり、ちょっと豪華なお昼の後水族館を回ったり、勢いで焼肉に行ったり、バイト先の知人にエロゲを売りつける為に居酒屋に入ったり、2泊3日の東北旅行に連れて行ってもらったりした。後半には煙草を本格的に吸い始め、その伝で友人と会って一緒に酒や煙草を喫んだり食事に行ったりした。食事と云えばこの頃、同居人と共用の台所に立つのを厭って中食・外食が多くなっていたのも良くなかった。極めつきは自己投資だ。6万の真空管アンプヘッドを注文したり、新居の本棚、そこに納める詩集や小説など、モノを買う事が多かった。壊れた携帯の交換にも金が掛かった。こうして書き出してみると、自分の何処にそんな金があったのか不思議でならない。今年の夏が例年に無く楽しかったのは、偏にこの大胆な消費行動のお蔭なのかもしれない。尤も、そのために今年の秋は散々な目に遭いそうだけれど。

 今日はひどく寒かった。夜のバイトを終えて空腹で帰途に就き、最寄りの、金曜の晩で賑やかな駅を出た途端、冷たい雨風が舐めるようにして全身に襲い掛かってきた。ロータリーにはタクシーを待つ人々が並んでいたが、生憎そんな贅沢は今の自分には無縁だった。取り敢えず空腹を紛らわそうと行きつけの喫煙所で煙草を一本、そして少し行った先のスーパーで、炒め物用に豆苗と魚の缶詰を買って帰った。換気扇を回し、ガスでの給湯で手を暖め、電気ポットで沸かしたお湯でココアを2杯飲んだ。もう寒くはない。