最終回

<行動がその充足をなし遂げることが可能なのは、その欲望の対象を「否定」すること、それを破壊するか、あるいは少なくともそれを変化させることによる以外ない。たとえば飢えを充足させるためには、食料となるものを破壊するか、あるいは変化させる必要が…

エロ ~走る小人、笑う恋人~

このところ、初期の七尾旅人ばかり部屋で流している。よく聴くところでは、「コナツ最後の日々。」「萌の歯」「ガリバー2」「コーナー」「戦闘機」「5日前まで○○だった女の子と医師マニアの冒険」。コード譜が拾えるものであれば、自分で弾きながら歌った…

最近の憤り

先日から口髭を伸ばし始めた。第一にはこれからの仕事のため、第二には日々の時間の経過に楽しみを見出すため、そして第三、これが最大の理由であるが、その感触を喜んでくれる女の人に報いるため、である。現在のところまだ3週間ほどしか経っていないので…

来迎

ときたま、特定の小柄な女性相手に、自分は何か特別な、恩寵のような感覚を覚える。別に少女性愛の趣味などではなく、むしろこの感覚は歳が同じかそれ以上の相手に対して覚えることが多い。身体の物理的な小ささがかえって<存在>の背景たる<世界>とその…

6/9

最近は報酬系がひどく狂うような悲しい出来事があって、そのせいか寝て見る夢だけが唯一の楽しみになってしまった。悲しい。己の生存圏とでも呼ぶべきパワーの領域が縮小し、自我の前線が著しく後退してしまったようだ。起きていても特に期待すべき喜びは無…

4/27

美なるもののすこぶる厄介な特質として、その鑑賞の対象が鑑賞者にとってあたかも自分の事のように感じられてしまうという点があると思う。美しいものは、あくまで主観に、観る/聴く…人の内部に火焔を生じる。簡単に言えば、憧れを生むのだ。そして、憧れは…

聖餐

あらゆる種のパーティーが苦手だ。便所で自殺したくなる。夜もまたひとつの太陽だとは云うけど、こんな太陽なら撃ち落としてしまえと思う。出来ない。近くで見ると、存外でかい。快楽の贈与によるコミュニケーションが出来る人々は、個体の輪郭を超えて一つ…

ロロロ

虚脱。倦怠。不在証明。今は一切気力というものがない。この言葉の不誠実さを見抜いてくれる人々の悩苦への誠実さを自分は尊ぶ。真に疲労しているなら机に向かう体力など有る筈なくましてや物書きなんてもっての外、という矛盾のことだ。しかし、嘔吐。これ…

träumend

こんな夢を見た(夢十夜)。 夢の中で夢を見ていた。どこかの病室。白い壁、白い寝台、白い布団。春めいた陽光が乳白色のカーテンを淡肌色に染めかける中、その華奢なからだは薄緑の入院衣に包まれて横たわっていた。顔立ちはよく思い出せない。ただ髪と肌の色…

生活はつづく

諸事情でボツになった自作ポップソングのタイトルを添えて…… 春休みに入ってから割と元気に暮らしている。起きて顔を洗い、白湯を飲み、軽い食事とコーヒーを胃に入れる。その後は本(最近は実用書が多い)を数種類同時進行で頭が痛くなるまで読み、頭痛に耐え…

20230119

コーヒーを飲んでいる時は、<自分はコーヒーを飲むために生まれてきた!>と思い、煙草を蒸かしている時は、<この一服の為に生きている!>と思い、ギターを弾いている時も、本を読んでいる時も、最近は大体全部そんな感じです。

トマトを投げたい

トマトが投げたい。正確には誰かと投げつけ合いたい。普段の倍くらいの快晴の下、代々木公園の爽やかな芝生の上、相手は壮健な男子大学生30人程か、或いは顔の平たくてツリ目で髪の短い女の人、その人自体が権威にならないような不美人で、トマトの赤が映え…

禁じられた季節

玉の緒よ、絶えろ! 願わくば、二度と貫くな! 数珠繋ぎになった思考、思考とも呼べない強迫観念のロザリオが、じわじわと己の首を絞めようとしている。その一つ一つが、口にするのも忌まわしい。この苦悩は、人に話すに忍びない。美形の女のしかめ面が恐ろ…

茶番

本当に限界なので、脳内の人格とお茶をする事にした。電気ケトルでお湯を沸かし、急須代わりのガラスポットに茶葉のパックを放り込み、ペアの湯呑を一組用意する。この湯呑は昔、九十九島の土産屋で当時親密だった女性への真珠の耳飾りを買った際、店主の好…

唯心論の迷路

何だかここ最近は、上手に言葉を紡げないでいる。心の荒みをそのままに生活を送っているせいか、ことばの持つ微細で豊かな情感、詩情への感性がめっきり損なわれてしまった。その代わりなのか知らず、ここ数日は意地悪で解釈可能性に乏しい強い言葉ばかりが…

退屈の諸相(1)

とある潜在的な需要により……退屈とその対策について。 この文章は、退屈という厄介な感情を、この感情に無縁な人々に説明する目的で書いており、そのため論理というよりは感覚に訴求するやり方での表現が多い。そもそも退屈は気分、エモーションではなくムー…

お金が無い

お金が無い。今自由に使えるのは数千円、次の仕送りは2週間後、給料日までは1週間。それまでにバイト先までの交通費の立替だとか、バンド練習のスタジオ代もある。万事休する程では無いが、そこそこの窮境だ。序に言えば時間もない。1週間後のサークルの行事…

文体について

ここ三回の日記は然程面白くない、自分でそう思っている。固より日記など面白く書き立てるものではない。我が国の文学史上には日記文学と呼ばれる一大の作品群があるが、その発祥は当時王朝を支えた貴族が、宮中行事を始めとする職務において、己や子孫が先…

空砲(ハックルベリーに寄せて)

ここ数日は割といい生活を送っていたと思う。日曜日は体調不良で23時まで寝ていたが、翌の月曜はバッティングセンターに行ったり、大学近辺を散歩して偶然会ったサークルの友人と昼を共にしたり、ふと読みたくなった『謎の彼女X』を、貸していた友人(彼とは…

初雪

自分の歌声を録ることになったため、この頃は普段より多めに煙草を吸い、喉を焼いている。今日も寄稿曲の作業がてら昼間ベランダに出て一本二本、作業を終えて夕方三本四本と吸った。これを書き終えたらまた吸うつもりでいる。関東は台風、一歩部屋の外に出…

遷居

月末以降の引っ越しが決まった。予てよりの同居人との不和の為だった。とかく人と暮らすのには参る。生活のリズムが合わねば、騒音でまともに眠る事すらままならない。イヤフォンを貫通する話し声のお蔭で、昔好きだった音声作品すら楽しめなくなってしまっ…

Diary

ブログという形で文章を書くのは、これで四回目になる。元々は日常の雑感をそそと纏めて日記兼備忘録といった文章にするつもりだったが、生憎この自意識過剰な饒舌体の語り口のために、前三回は少々日記の枠を超えた分量になってしまったと反省している。こ…

浮き沈み

神経の慰めに即席の味噌汁を二杯、午前一時半のことである。出汁と味噌の優しい旨みと塩気、具と味噌のでろでろを溶くお湯の温かさが嬉しい。昨日は少し肌寒かった。先日の台風に伴って雨が降り続いた後、湿気と共に暑さが少し和らいだようだ。もう夏も終わ…

すみだ水族館へ

文章をブログという形式で書くのは然程簡単ではないようだ。そもそも文章を書くこと自体、コミュニケーションのいち形態である以上様々な困難が付きまとう。そこにブログという形式が加わることで、読み手が不特定多数になり、読者の想定という問題が加わる…

C101について

自分の所属するサークルから、冬コミに向けて”純愛”あるいは”愛”をテーマに文章等を寄稿するよう要請があった。中々扱いが難しいテーマである。そもそも定義があやふやで概念の存在すら明らかではない”純愛”という語を、ひとつ視点をしっかと据えて論述する…