禁じられた季節

 玉の緒よ、絶えろ! 願わくば、二度と貫くな!

 

 数珠繋ぎになった思考、思考とも呼べない強迫観念のロザリオが、じわじわと己の首を絞めようとしている。その一つ一つが、口にするのも忌まわしい。この苦悩は、人に話すに忍びない。美形の女のしかめ面が恐ろしいのに似て、己の文体、<頭をかち割って脳の皺の深さを直に見せしめる文体>は、素直に苦痛を出力してしまう。毒を呑んだ蛙のように、胃袋まで吐き出してしまう。饒舌は罪だ。軽蔑が罰だ。アア、また一つ珠が殖えた!

 

 こうも生きるのに不真面目でいると、かえって現実を直視する視力が生まれる。あたかも色付きの眼鏡が眩しさを抑えるように。脳が露出すると共に、己の松果体は再び視力を得た。今では労働や性愛、肉親や血液、死、そして沈黙のことばかり考える。どれも正気なら眩しくて直視するに堪えぬものだ。のっぴきならぬ実相の大問題だ。

 

 愛することは踏み躙ること、牛刀を振るうこと、よだかがかぶと虫喰らう哀しみ。腹を裂き首を落とし、そこで自らもまた生贄であること、死神の妾に過ぎないことを思う。死の余りの眩さに、生は只の影絵に過ぎないとさえ思ってしまう。こうなると一切はパロディ、娯楽は労働の、肉体は血液の、自己は両親の、言語は沈黙の、全てが実相を射抜いただけのシルエットに見えてくる。雪道の乱反射の中を往くような、盲になる外ない風景の最中に暮らすことになる。静脈の中に、春は二度と巡らない。万事休す。

 

 一日の中で、或いは一生の中で、最も長く影法師が伸びるのはいつ?

気付いた頃にはもう、太陽は海を連れて閨の中。